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飲食店の無断キャンセル対策|キャンセル料と事前決済

予約・OTA一次情報 7本
公開 2026/10/14最終確認 2026/10/14執筆 編集部
予約に占める無断キャンセル(2018年の推計)0.9%
当日キャンセル3.9%
席のみ予約で補えない比率5〜7割
判決が認めた平均的な損害4万7,250円
分類予約・OTA・再訪
所管経産省・観光庁
最終確認日2026/10/14
出典7本

この記事の要約

予約客が連絡なく来ない「ノーショー」。経済産業省の委託調査事業でまとめられた対策レポートと消費者庁の消費者契約法解説をもとに、キャンセル料の考え方、予約時の明示、再確認、事前決済、外国人客向けの多言語の規約表示まで整理します。

本文

予約したお客さまが連絡もなく来ない無断キャンセル(No show、ノーショー)は、席を空けて待った時間も、仕込んだ食材も戻ってこない損失です。この記事では、経済産業省の委託事業として有識者勉強会がまとめた「No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート」(2018年11月1日公表)と、消費者庁の消費者契約法の逐条解説をもとに、キャンセル料をどう考えるかと無断キャンセルを減らすために店が何をするかを整理します。外国人のお客さまに予約のルールを伝えるときの注意も最後にまとめました。予約の受け方全体はインバウンド向け予約・順番待ちの整え方で扱っています。

2026年10月14日時点で、上記レポートと消費者庁の逐条解説(令和5年9月)、令和4年改正の案内ページを直接確認して書いています。レポートの公表ページは現在の経済産業省サイトには残っていないため、国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WARP)が2018年12月に保存した写しで本文を確認しました。本記事は公的資料の整理であり、個別の請求の可否を判断するものではありません。

DATA01無断キャンセルはどれくらい起きているか(2018年の推計)

レポートは、無断キャンセルが飲食店の予約全体の1%弱を占めると言われているとし、飲食業界全体に与えている損害は年間で約2,000億円とも言われている、としています。さらに、1日前・2日前に生じるキャンセルまで含めると発生率は6%強に達し、被害額は約1.6兆円に及ぶと推計しています。いずれも2018年の公表時点の推計です。

無断キャンセル0.9%
当日キャンセル3.9%
前日キャンセル1.1%
2日前のキャンセル0.6%
3日前以前のキャンセル2.8%

上の表は、2018年公表のレポートが予約台帳サービス会社のデータから推計した、飲食店の予約に占めるキャンセルの内訳です。無断キャンセルそのものより、当日のキャンセルの方が多いことがわかります。

損失が大きくなるのは、店が「遅れて来るかもしれない」と考えて席を空けて待つからです。レポートは、無断キャンセルでは予約時間の後、平均2〜3時間(もしくは閉店まで)の機会損失が生じていることも考慮すべきだとしています。さらに、損失を補うためにメニュー価格へ上乗せしたり、無断キャンセルが多い「席のみ予約」をやめてコース予約だけにしたりする店もあり、その不利益は他のお客さまにも及ぶとしています。

FEE02キャンセル料はどう考えるか

レポートは、予約の内容が確定していれば、ネット予約に限らず口頭の電話予約でも契約が成立することがあるとし、無断キャンセルで店に損害が生じた場合は、債務不履行(民法415条)や不法行為(民法709条)として損害賠償を請求することが可能だと考えられる、という整理をしています。

ただし金額には上限の考え方があります。消費者契約法9条1項1号は、契約の解除に伴うキャンセル料(損害賠償の予定や違約金)を定めた条項でも、解除の事由や時期などの区分ごとに、同種の契約の解除で事業者に生ずべき「平均的な損害の額」を超える部分は無効としています。店が決めた金額がそのまま認められるとは限りません。レポートは予約の種類ごとに、次のように考え方を示しています。なお、消費者契約法の「消費者」は個人で、事業として又は事業のために契約の当事者となる場合は除かれます(同法2条1項)。

コース予約人数分の料理を準備するため、別のお客さまで埋め合わせることが著しく難しく、損害が全額となることがあるとしています。その場合はキャンセルポリシーに基づいて全額を請求できるとする一方、転用できる飲食物の代金や人件費は除くなど、店の収益構造に沿って損害額を算定する必要があるとしています
席のみ予約個別の予約ごとに損害を計算するのはきわめて難しいため、客観的な基準で算定した平均客単価の何割か(平均客単価から転用できる原材料費・人件費などを除いた額)が一つの目安になるとしています。食材原価が売上の3割、人件費が4割弱、家賃や光熱費などの固定費が3割と一般に言われることを挙げ、直前の無断キャンセルでは補えない金額の比率が5〜7割に高まると予想しています。ただし消費者庁の逐条解説は、9条の「平均的な損害の額」は個々の事業者に生ずべき損害の額について契約の類型ごとに合理的な算出根拠に基づき算定された平均値で、業界の水準を指すものではないとしています。レポートも、飲食店は自身の店舗の収益構造等に基づき適切な算定ができるよう準備しておく必要があるとしています

席のみ予約の目安に使う平均客単価は、お客さまがいつでも確認できる必要があり、実態とかけ離れた単価を設定することは許されないとしています。店は予約客に対して、平均客単価や損害賠償額の算定方法を事前に示し、説明できるように準備しておくべきだ、というのがレポートの立場です。

早めの解約では、認められる額が小さくなる例もあります。レポートが紹介する東京地方裁判所の控訴審判決(平成14年(レ)第12号)は、開催の2か月前に解約された30〜40名のパーティー予約について、1人あたりの料金4,500円の3割に予定人数の平均35名を掛けた4万7,250円を「平均的な損害」と認めました。消費者契約法9条も「解除の事由、時期等の区分に応じ」て平均的な損害を考えるとしており、キャンセル料を時期で区切って決めるのはこの考え方に沿ったものです。

POLICY03決めて、予約時に示し、聞かれたら説明する

レポートは、キャンセル料を請求するには、適切なキャンセル料を算定すること、キャンセルポリシーを設定すること、予約時にその内容を店からお客さまに明示することが必要と考えられるとし、店はキャンセル料の構成を説明する責任を負うとしています。根拠のない法外な金額のキャンセル料には法律上の問題があるとも書いています。

レポートの公表後、2023年(令和5年)6月1日に施行された改正消費者契約法で、9条に2項が加わりました。事業者がキャンセル料などを請求する場面で、お客さまから説明を求められたときは、その算定の根拠の概要を説明するよう努めなければならないという努力義務です。消費者庁の逐条解説は、費用の具体的な数字まで説明する必要はなく、キャンセル料を決める際に考慮した費用の項目などを説明すれば足りるとしています。努力義務のため、違反を理由に直ちに取消しや損害賠償の効果が生じるものではないとも説明しています。

店の側で用意しておきたいのは、たとえば「コースの食材は前日までに仕入れと仕込みを済ませるため、前日以降の取消しでは食材費と仕込みの人件費がかかります」のように、時期の区切りと費用の項目を結びつけた一言です。ポリシーには少なくとも次の点を書いておくと、予約時の明示と事後の説明の両方に使えます。

  • 対象: コース予約か席のみ予約か、何名以上の予約に適用するか
  • 時期と金額: いつから料金がかかるか(当日・前日など)と、その金額または割合
  • 遅刻の扱い: 連絡なく何分遅れたら取消し扱いにするか
  • 連絡方法: キャンセルを受け付ける手段と受付時間
  • 支払い方法: 事前決済分から差し引くのか、登録カードに請求するのか、後日請求するのか

PREVENT04無断キャンセルを減らすために店ができること

レポートは、無断キャンセルの防止に向けて飲食店に期待される取り組みとして次の4点を挙げています。キャンセル料の請求は起きた後の話なので、まずはこちらで件数を減らすことが先になります。

予約の再確認(リコンファーム)電話での再確認は負担が大きく、人手の少ない店では難しいこともあるため、予約システムのSMSやメールを使えば負担が少ないとしています。レポートの事例では、来店3日前・前日・当日朝などに連絡を入れる方法が紹介されています。予約時に連絡先を確実に聞いておくことも第一歩とされています
キャンセルの連絡をしやすくするキャンセルしようとしても連絡がつかず、結果として無断キャンセルになる例もあると想定しています。開店前で電話がつながらないといった事態を防ぐため、再確認のSMSやメールにキャンセルボタンを付ける方法が挙げられています
キャンセルポリシーと料金の目安を示すネット上での明示に加え、電話予約でも必要最低限のポリシーの説明を行うべきだとしています。予約内容とポリシーを確認するSMSを送る方法も効果的とされています
事前決済・預かり金(デポジット)宿泊業と同じように、抑止力の一つとして検討する必要があるとしています。クレジットカードの事前登録を求める例が国内外にあることを挙げ、予約の人数や金額から一定規模以上の被害が予想される場合に導入することが考えられるとしています

事前決済とカードの事前登録は、予約システムや決済サービスの機能を使って行うことになります。どのサービスが対応しているかは各社の公式情報で確認してください。店頭の決済手段の整え方はインバウンドの決済対応にまとめています。

INBOUND05外国人客の予約では、規約を読める言語で

レポートは海外の例として、欧米では予約時にクレジットカード番号の登録を求めたり、予約時間から一定時間を過ぎた予約を無断キャンセルとみなしたりする仕組みがあると紹介しています。米国の予約サービスOpenTableについては、キャンセルは遅くとも30分前までの連絡を勧めていること、確定にカード登録が必要な店では無断キャンセル時にキャンセル料を請求する権利があると明記していること、多くの店で遅刻は15分まで認め、連絡なく遅れた予約は無断キャンセルとして扱うことを挙げています(2018年時点の紹介)。

こうした仕組みに慣れたお客さまもいる一方で、問題になるのはルールが予約の前に読める形で示されているかです。観光庁が2025年11月〜2026年1月に5空港で行った訪日客調査では、多言語表示に困った446人のうち24%が「記載量が原文と比較して少ない」、20%が「誤訳があった」と答えています。キャンセルポリシーの英訳で「前日から」「何分の遅刻で」といった条件が抜け落ちていれば、請求の場面で行き違いが起きます。

  • 条件を削らずに訳す: 日本語版の対象・時期・金額・遅刻の扱いを、英語版でもすべて書きます。機械翻訳は下書きにとどめ、英語の話せる人に確認してもらいます
  • 予約の前に見える場所に置く: 予約フォームの確定ボタンの前、予約完了画面、確認メールに同じ文面を入れます。店頭や電話で受けた予約は、確認のメッセージで文面を送ります
  • 国外からでも使える連絡手段を書く: 電話だけでなく、メールや予約サイトのメッセージなど、旅行者が使いやすいキャンセル窓口を示します
  • 予約経路ごとの設定をそろえる: 予約サイト経由の予約では、そのサイトに登録したポリシーと、店のサイトや店頭に掲げた内容が食い違わないようにします
  • 金額は円で書く: 割合だけでなく、1人あたりの金額を円で示すと計算違いが起きにくくなります

表示の訳し方や英語表記のそろえ方は店頭の案内表示を多言語にする方法、会話での補助は翻訳ツールの選び方を参考にしてください。予約の入口になる地図の店舗情報の整え方はGoogleビジネスプロフィールの設定で扱っています。

FAQ06よくある質問

Q. 電話で受けた予約でもキャンセル料を請求できますか?
A. レポートは、内容が確定していれば口頭の電話予約でも契約が成立することがあるとしています。一方で、請求の前提としてキャンセルポリシーを予約時に示すことが必要と考えられており、電話予約でも必要最低限のポリシーを説明すべきだとしています。個別の請求の可否は弁護士などに相談してください。
Q. キャンセル料を「料金の全額」にしてもよいですか?
A. レポートは、コース予約では損害が全額となることがあるとしつつ、転用できる飲食物の代金や人件費は除いて算定する必要があるとしています。個人のお客さまとの契約(消費者契約)では、消費者契約法9条1項1号により、平均的な損害の額を超える部分は無効です。時期や予約の種類ごとに根拠を説明できる金額にしておくことが前提になります。
Q. 外国人のお客さまにも同じルールを適用できますか?
A. 国外に住む人との契約にどの国の法律が適用されるかなどは個別の事情で変わるため、本記事では判断しません。外国人客に限った扱いを示す公的資料は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。実務では、日本語と同じ条件を予約前に読める言語で示しておくことが出発点です。
Q. お客さまから「キャンセル料が高すぎる」と言われたら?
A. 2023年6月施行の改正消費者契約法9条2項で、説明を求められたときは算定根拠の概要を説明するよう努めることになっています。具体的な数字までは不要で、考慮した費用の項目を説明すれば足りるとされています。なおレポートは消費者に対し、法外な額だと感じたら消費生活相談窓口に相談するよう呼びかけています。
Q. 事前決済はどんな予約に向いていますか?
A. レポートは、予約の人数や金額から、無断キャンセルが起きたときに一定規模以上の被害が予想される場合に、事前決済や預かり金の導入が考えられるとしています。

※本記事は公的資料をもとにした情報提供で、法律相談ではありません。キャンセル料の設定や請求、契約条項の作成は、弁護士などの専門家に確認してください。レポートは2018年の公表で、その後、消費者契約法9条に2項が加わるなど関係する法令が改正されています。条文はe-Gov法令検索で最新のものを確認してください。

出典

確認状況

最終確認日

2026/10/14

執筆

編集部

注意

制度・数字は改正等で変わります。最新の内容はリンク先の公式ページでご確認ください。

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